会社は発起人が出資をすることで設立していきます。
会社設立時は発起人がそのまま取締役等の役員に就任していくのが一般的です。
ただ発起人ではない人を役員としたい場合があると思います。
例えば、「自分の妻を取締役として会社を設立したい」なんて時に
奥さんは1円も出資しなくていいのでしょうか?
この点の疑問について書いてみたいと思います。
1円もお金を出さなくても取締役になれるけれど
結論としては1円も出資しない人でも取締役等の役員になれます。
発起人については会社法で
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
(会社法第25条第2項)
と定められていますので、株式を引き受けるために必ず出資をしなければなりません。
しかし、取締役についてはこういった規定がありません。
ですので取締役は出資が義務付けられていません。
極端なことをいえば1円も出資しない人が代表取締役になってもいいわけです。
ただし、取締役等の役員になるには一定の責任が生じるので1円も出資しないからといて気軽に引き受けてはいけません。
取締役の責任
取締役になると会社に対して重い責任を負うことになります。
取締役の責任は
- 任務を怠って会社に損害を与えた場合は損害賠償責任を負う(会社法第423条)
- 会社と利益相反取引を行った場合、損害に対して会社に責任を負う(会社法第423条)
- 競業取引に当たる行為を行ってはいけない(会社法356条1項1号)
- 会社又は第三者に損害を与えた場合責任のある役員は連帯債務者となる(会社法第430条)
が挙げられます。
1円も出資していないからといって業務を怠ることは許されません。
会社に損害を与えるような取引に反対しなかった取締役も職務を怠ったことと推定され、損害賠償を請求されるおそれがありますので注意が必要です。
また気軽に取締役を引き受けるとライバルとなる会社を経営することはできません。
やった場合には事業の利益の額に対して損害賠償を請求される場合もあるのです。
ですので
「1円も出資しなくてもいいから取締役になってくれ」
などといわれ、いい気になって気軽に取締役を引き受けてはなりません。
取締役に就任する場合にはそれなりの覚悟をもって引き受ける必要があります。
まとめ
取締役は1円も出資しなくてもなれますが、それなりの責任がついて回ることを理解しておかないといけませんね。
家族を取締役にする場合は特に問題となることはありませんが、友人を誘う場合には取締役としてのリスクをきちんと説明してからなってもらいましょう。