「事業が軌道にのってきたので少し広いところへ本社を移動しよう!」
なんて考えていませんか?
経営者としてやり手なあなたに本社を移転する際に必要な手続きを解説したいと思います。
本社の移転の手続は定款の規定と法務局の管轄によって幾つかのパターンに分かれます
本社の移転は会社法上「本店の移転」というものになります。
登記簿の本店の欄を変更すればいいというものではないんです。
本店の移転で注意すべきなのは、定款の記載と法務局の管轄です。
以下で各場合の手続の違いについて書いていきたいと思います。
定款の本店の記載による手続きの違い
あなたの会社の定款を確認してみてください。
「第○条 当会社は、本店を東京都○○区に置く。」 や
「第○条 当会社は、本店を神奈川県○○市に置く。」
といった風になっていれば、それは本店を最小行政区画で定めているということです。
最小行政区画とは市区町村のことです。
会社法では定款で本店を最小行政区画で定めても、具体的住所で定めてもいいことになっています。
この場合は同一市区町村内の本社の移転であるか、違う市区町村へ移転するかで手続きがかわります。
同一市区町村内の移転の場合
この場合は定款を変更する必要がありませんので、
取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)で本社の移転を決定することになります。
違う市区町村へ移転する場合
この場合には定款変更が必要となるので、本社の移転の決定には株主総会の特別決議が必要となります。
特別決議とは定款で別段の定めがある場合を除いて、議決権を有する株主の議決権の過半数の出席と出席した株主の議決権の2/3以上の賛成が必要となります。
取締役だけで決定できる場合に比べて手続きが煩雑になります。
定款変更の決議以外にも本店移転への決議も必要となります。
株主総会で移転先の具体的所在地番及び移転時期まで定めた場合には株主総会決議だけでOKですが、定めていない場合は別途取締役の過半数の一致(取締役設置会社の場合は取締役会の決議)が必要になります。
法務局の管轄によって手続きが変わる場合
会社の情報は管轄の法務局が管理しています。
この管轄する法務局が変わるかどうかで登記申請の仕方が大きく変わります。
法務局の管轄は市区町村ごとではないので注意が必要です。
例えば、神奈川県の場合は、法務局の管轄は2つしかありません。横浜市・川崎市を管轄する横浜地方法務局とそれ以外のすべての市区町村を管轄する横浜地方法務局湘南支局となっています。
ですので、横浜市から川崎市へ本社を移転する場合には、同一の管轄内での移転となります。
同一管轄内での本店移転
同一の管轄内での本店移転では特に難しい手続きは行われません。
法務局内で本店の記載が新たに書き換えられることになります。
登記の申請書も1通で大丈夫です。
手続にかかる登録免許税も3万円で済みます。
他管轄への本店移転
違う管轄へ本店を移転する際には注意が必要です。
- 新管轄への登記申請書の作成
- 新管轄への印鑑届出
が必要になるからです。
新本店所在地分への登記申請書を含めて2通作成し、旧本店所在地へ提出します。
登記申請
新本店所在地への登記申請書には
本店移転当時の株式会社を登記事項を全部記載して
最後に
登記記録に関する事項
平成○年○月○日東京都○○から本店移転
といった記載が必要になります。
旧管轄への登録免許税が3万円と新管轄への登録免許税が3万円かかるので、計6万円も税金を取られることになります。
他管轄の法務局へ本社を移転した場合は、古い管轄の登記簿は閉鎖され、新しい管轄の法務局へ登記情報が作成されます。
印鑑届出
会社設立時に会社の代表印を届出したように、本社を移転する場合も新しく会社の代表印を届出しなくてはなりません。
ただし、同一の印鑑を使用するのであれば旧管轄の法務局を経由して印鑑の届出を行うこともできます。
新しく印鑑の届出をする際には代表取締役の個人の印鑑証明書が必要になりますがこの方法では、印鑑証明書の取得を省略することができます。
印鑑カードは法務局へ返却し、新しいカードが発行される規定ですが、実務上はカードを返却しなくても新しいカードは発行されます。
本社を移転した場合に必要な他の手続
本社を移転すると登記申請の他にも以下のような手続きが必要となります。
- 税務署への届出
- 都道府県税事務所への届出
- 市区町村長への届出
- 年金事務所への事業所所在地変更届
- 労働基準監督署への名称、所在地変更届
- 職業安定所への雇用保険事業所変更届
- 郵便局への郵便物届出変更届
こちらも忘れずに手続きをしておきましょう。
まとめ
本社の移転は思っているよりも面倒な手続きです。
いろいろパターンによって手続きが大きく変わってきますので、どのパターンがあなたの会社に当てはまるのかきちんと確認してください。
出来れば司法書士に任せてしまった方がいい手続きだと思います。