個人事業主としてある程度軌道にのってくると税金面や取引面から法人を設立した方が有利になる場合があります。そこで法人を設立するいわゆる「法人成り」をすることになるのですが、この時にきちんと計算して事業年度を定めないと思わぬ損をしてしまいます。
法人の成りの際に気を付けるべき事業年度の設定方法を解説いたします。
法人の事業年度はいつから始めてもよいが、、、
個人事業主の場合には事業年度が1月1日から12月31日までに固定されていますが、法人の場合には自由に定めることができます。 よく「○月決算」という言葉を聞くと思いますが、これが事業年度です。事業年度の終わりを基準として会社の一年の利益を計算することになります。
法人は設立すると原則第2期までは消費税の課税が免除されます。設立したばかりで大変だろうから消費税は納めなくていいという国からのやさしさですね。
ということは、フルに2年間消費税が免税されるので設立月に前の月を決算月として事業年度を決定することを考えますよね。しかし、これには大きな落とし穴があるのです。
設立2期目から消費税を納めなくてはならない場合がある
資本金が1000万円未満であればどんな場合でも設立第1期目から消費税を納める必要はないです。
設立第2期目には設立当初6カ月間の
- 課税売上高
- 給与の支払い
上記のいずれかが1000万円を超える場合には消費税を納めなければならなくなります。最初は大変だろうから消費税は納めなくていいといった規定も最初から売上あげてるならきちんと消費税を納めろということですね。この辺はやさしくないんですね。
ただし、この規定を回避する方法があります。
それが特定期間と短期事業年度という考え方です。
基準期間と特定期間
法人成りの場合、既に事業が軌道に乗っていることが多いので設立から6カ月で売上が1000万円超えてしまうことが普通にあります。
消費税を第2期目から課税されないようにするためには、設立1年目の事業年度を7カ月以下にすればいいんです。
なぜ7カ月か不思議ですよね。普通は6カ月未満にするとか考えるんですがこれには税法の規定が関係しています。
かつて、消費税を課税されるかどうかについては
「基準期間」の課税売上高が1000万円を超えるかどうかで判定していました。
「基準期間」とは
- 個人事業者: 前々年
- 法人: 前々事業年度
のことです。
2年前の売上高が1000万円を超えていれば今年の売上に対して消費税を課税しますよという規定になっていました。
その後税法の改正により特定期間による判定基準が追加されました。
前事業年度の開始後6カ月に課税売上高が1000万円を超えた場合には消費税を課税するという規定になったため、会社を設立しても2期目に消費税が課税される可能性がでてきたんです。
この特定期間には「短期事業年度」の特例があります。
短期事業年度とは
- 前事業年度が7カ月以下の場合
- 前事業年度が7カ月を超え8カ月未満の場合であって、前事業年度開始の日以後6カ月の期間の末日の翌日から全事業年度終了の日までの期間が2カ月未満の場合
のいずれかに該当する前事業年度のことをいいます。
色々規定は複雑ですが簡単にいうと、1年目を7カ月以下の事業年度にすると特定期間に当たらなくなるため消費税を納めなくてよくなるのです。
売上1000万円超えるか微妙な時には事業年度の変更で対応
設立後6カ月以内の売上高が1000万円を超えるかどうか微妙なケースもあると思います。この場合には設立時には2年間フルに免税期間を取る予定で設立をします。
その後、課税売上高が1000万円を超えた場合には初年度の途中に事業年度の変更を行います。事業年度は定款で定めていることが多く株主総会での特別決議が必要となりますが、途中で決算期を変更することは可能なんです。
かなり慎重な判断を素早く行うことになりますので1000万円を超えると見込まれる場合にはこの方法はおすすめできません。
会社設立は知識がないと大きく損をしてしまう場合があります。
会社をただ設立するだけなら個人でも法務省のページなどを見て申請することは可能でしょう。しかし、なんとなく事業年度を設定してしまうと大きく損をすることになります。
その他にも補助金を見逃していたり、雇用助成金をもらい損ねたり、許認可に必要な目的の記載が欠けていたりと失敗例を多く見ています。
会社設立は思っている以上に将来のことを見据えて会社を設計しなくてはなりません。
わずかな費用を節約するために大きく損をしないよう会社法、税法の知識に自信のない方は専門家に相談することをおすすめいたします。